事務長インタビュー 第4回 大西脳神経外科病院
2012年12月13日
~冒頭~
第4回目の事務長インタビューは、医療誌や新聞でも紹介されています大西脳神経外科病院です。2013年春に新病棟オープンを控えています。病院の現状~長期的な展望を藤井事務部長に詳しくお伺いしました。
■初めに、藤井事務部長が病院に入職された経緯を教えてください。
前々職の時にお世話になった施設経営者のご紹介により、大西理事長とのご縁をいただいた事が入職のきっかけです。この病院でお世話になる事ができれば、私自身ステップアップできると考え、また年齢的な事もあり、大西脳神経外科病院で骨を埋めるという思いで入職しました。
■病院に対しての率直なお気持ちをお聞かせ下さい。
大西脳神経外科病院の医療水準や世間からの評価は非常に高いので、働くという満足感はあります。当院は開院してから10年以上経過し、私は入職して4年目になりますが、今後当院が発展するためにはマンパワーが必要だと痛感しています。そのためにも、人事システムや教育システムを更に発展させる必要があります。私には、理事長の補佐をすると同時に、スタッフが働きやすい環境を整備する役割もあると思っています。当院が50年・100年と長い期間に渡って、地域の脳疾患医療を担う病院であり続けるためには、人事も含め私の成すべき事は多くあると考えています。
■2000年に病院開設に踏み切った時、大西理事長先生はどのような思いがあったのでしょうか。
理事長から、「医局員として病院勤務していた時代に、検査部門へ緊急を要する入院患者の検査依頼をしたところ、勤務時間の終わり間際だったためにスタッフから断られた事がある」と、聞いた事があります。その時に理事長は、医療を共に行うパートナーが、医療とはかけ離れた対応をとった事に、強い憤りを感じられたようです。このような環境では時間との勝負である脳卒中医療を行うには限界があると感じ、地元で開院されました。
■病院の周辺事情と立ち位置を教えて下さい。
当院がカバーしている地域は、東播磨医療圏(明石・加古郡・播磨町・加古川市・高砂市)と神戸市西区等であり、人口100万人近くの医療圏になります。救急車の受け入れは年間 約1200台、外来数は1日平均200名あります。また、地域全体の救急体制の確立にも力を注ぎ、東播磨脳卒中地域医療連携協議会の代表世話人を大西理事長が務め、また当院がその事務局として、地域の脳卒中医療の取りまとめもしております。
■地域の医療機関とどのような連携をとられていますか。
限られた病床でより多くの救急対応を行うため、兵庫県立リハビリテーション中央病院等のリハ病院と地域連携パスをつなぎ、治療計画を連携病院同士で共有しています。連携の質を高めるために、当院が事務局となり地域の病院や診療所の医師や看護師を集め開催している「脳卒中フォーラム」と「脳外科懇話会」において、お互いの顔と顔がわかる付き合いをし、連携を深めています。また、地域連携室の強化も図っています。室長兼事務次長・社会福祉士1名・退院調整看護師1名・事務員1名の計4名がおり、役割分担する事で効率化を図っています。そして、事務的な事に関する医師への負担を軽減する取り組みとして、医師秘書を外来に4名、病棟に2名、医局に2名配置しています。他の職種で補える仕事は他の職種が担い、医師にはできる限り医療に集中していただける環境作りをしています。※平均在日数15.1日、病床稼働率は92.4%。
■2013年春 新病棟がオープンしますが、どの部分が大きく変わりますでしょうか。
「一般病床82床から40床を増床」、「手術室を1室から4室へ増室」、「2台あるMRIを3台へ」、「リハビリテーションにおけるフロア一元化」が、大きく変わる部分です。手術室については、理事長のこだわり(手術のクオリティーを高める)を元に設計しています。術中MRI撮影を可能にするため、手術室の隣の部屋に新しいMRI室を設置し、手術室とMRI室を可動式のドアで繋げます。また手術室1室では手術中に別の緊急手術が行えないため、それを改善すべく4室へ増室します。リハビリについては1フロアで理学療法・作業療法・言語療法の全てが行えるようにします。現状ではそれぞれのリハを別フロアで行っていますが、運営管理の向上と、セラピスト同士が治療を把握する事でお互いが感化できるような環境作りを目指していきます。
■看護師やコメディカルとの連携を深めるために、どのような取り組みをされていますでしょうか。
当院では、医局のカンファレンスをAM 7時半から毎日1時間しており、理事長を含めた常勤医は全員参加しています。そこに看護師・コメディカル・事務の責任者クラスも参加し、患者さんについての報告や相談を行っています。医師からコメディカルへ、コメディカルから医師へ、意見や要望を伝える事ができる場が毎日ありますので、おのずと連携は密になります。またNSTチーム(医師・看護師・管理栄養士・薬剤師等)では、患者さんの栄養状態に関する情報を交換する場を毎週設けており、リハビリについても別でカンファレンスを行っています。特別な事をするのではなく、日常的にスタッフ同士が話をしており、また病院の規模的にも職員数は180名程で職員間の顔が見えるので、コミュニケーションは非常にとりやすい病院だと思います。
■1分・1秒を争う現場において、救急隊とはどのような連携を取っておれらますか。
救急隊との連携強化を図るため、救急搬送される患者さんの情報を記録できる用紙(プレホスピタルレコード)を独自に作成しました。また救急救命士の実習先の指定を受けている事もあり、救急隊員とも日常的にコミュニケーションをとっています。当院の事を知って頂いた上で、救急受け入れ要請が入りますので、より高レベルの連携ができていると思います。そして明石の救急隊とは、毎年 意見交換する場も設けています。そこには理事長・副院長・救急部長・看護部長・私等の病院スタッフも参加し、救急発生件数や要請件数の確認や、あるいは救急要請に応えられなかった事案等について議論もしています。情報は必ず常勤の先生方へ フィードバックしていますので、救急の現場において活かされていると思います。
■時間外における救急体制をお聞かせ下さい。
時間外においては、当直医とオンコール待機医がいる体制を365日24時間とっています。放射線技師・臨床検査技師・オペ看護師はオンコール体制を敷いています。オンコール待機医は遅くとも30分程で病院に到着しますので、検査中には医師2名体制になります。また当直は常勤医が出来る限り行うようにしており、経験が浅い医師が当直を行う時には、経験のある常勤医がバックに着くという万全の体制をとっています。 ※常勤医師数について:脳神経外科9名(内専門医6名)・麻酔科1名の計10名
■全国でもTOPクラスの手術をしておられますが、一人の先生が行う手術件数はどれくらいでしょうか。
平成23年1年間で、675件(うち脳腫瘍 55件、脳動脈瘤開頭術 164件)の手術を1室の手術室で行っております。全手術件数の内、最も多かった医師で160件、次いで124件という実績でした。新病棟完成後はオペ室が4室になりますので、手術件数はこれまで以上に増え、入職していただける先生方に活躍いただける機会も確実に増えます。
■病院の中長期的な展望について、お聞かせください。
新病棟が完成し院内の状況が落ちついた後に、外来のブースで行っている脳ドック・検診のスペースを改修して、積極的に脳ドック・検診を取り組んでいきたいと考えています。また 増築によって「手術室を増やす」、「リハビリを拡充する」といった事は実現できるので、次の段階としては更に新たな建物を作り、放射線治療(ガンマナイフやリニアック等)の導入や、脳腫瘍の手術手技の開発や神経系に特化した研究ができる臨床研究部門の設置を考えています。
■地域との関わりについて、何か取り組まれている事はありますでしょうか。
平成23年度から開催したオープンキャンパスならぬオープンホスピタルを、今後継続する予定です。オープンホスピタルでは、「一般の方」、「将来医療職を目指す方」、「すでに医療職に就いている方」等を対象として、「模擬救急室で処置・薬の処方・超音波室検査のデモ・実画像を使ったMRI等の説明」や、「目指す職業に分かれての相談会」を行っており、ご好評をいただいております。今年は医師を目指して勉強している中学生・高校生の参加者が多く、理事長はご本人とご家族との懇談をしました。医学の道へ進むという目標が見えて気持ちが固まったようで、後日 中高生が通う進学塾の先生から「勉強に取り組む姿勢が変わった」と理事長へ連絡があったそうです。私たちにとってその言葉は非常に励みになりました。当院のスタッフも子供たちと生き生きと交流をする事は院内の活性化にも繋がりますし、地域の方々に当院を身近に感じていただくためにも、これからも継続したいと考えています。
■最後に、ご覧になっている先生方へコメントをお願いします。
当院の医療活動の根幹を支えてきたものは、お互いが切磋琢磨しようとする気持ちです。理事長自身もそれを率先し継続しており、毎朝のカンファレンスとその後に続く病棟回診等で、医師と他の職種は積極的に情報共有と意見交換をしています。このような地道な事を続ける事が、今日の医療の質の高さに繋がり、その結果 各方面からの高い評価をいただけるようになったと、私は思っています。
このような中に身を置く事は大変な部分もありますが、若い先生であればここでの経験は今後のキャリアアップに必ず役立つ事と思います。また経験豊かな先生に加わっていただき、ゆくゆくは病院の将来を担う幹部になっていただきたいという気持ちもあります。将来的な病院の雰囲気としては、病院の軸となる常勤の医師がおり、一方では若い医師が経験を積むために入れ替わり立ち代わり いつも入り乱れているという、活気のある現場になればと私個人は思っています。
大西理事長は経験や年齢は全く問われておりません。大学医局や学閥等のしがらみも全くありません。新病棟が完成し、その後もまだまだ当院は発展していきます。ご活躍していただける場は無限大にありますので、まずはご見学にきていただければと思います。ご見学については、朝のカンファレンスからをお勧めさせていただいております。遠方の場合はもちろん、前泊のホテルをご用意させていただきますので、是非ともお気軽に足をお運び下さい。お待ちしております。